低体温症(ハイポサーミア)発症時のアウトドア救急マニュアル

低体温症(ハイポサーミア)発症時のアウトドア救急マニュアル

1. 低体温症とは?

低体温症(ハイポサーミア)は、体の深部体温が35℃以下に下がってしまう状態を指します。日本では冬山登山やキャンプ、釣りなどのアウトドア活動中に発症することが多く、気温がそれほど低くなくても風や雨、濡れた服などが原因となり発症しやすいのが特徴です。

主な原因としては、寒冷な環境への長時間の暴露、不十分な防寒対策、濡れた衣服や疲労・脱水などがあります。また、高齢者や子どもは特に体温調節機能が弱いため、注意が必要です。

初期症状は震え(シバリング)、手足の冷え、皮膚の青白さなどですが、「疲れているだけかな?」と見過ごされがちです。進行すると意識障害や話すことが難しくなる、歩行困難といった重篤な状態になる場合もあります。

アウトドアでの低体温症は誰にでも起こりうるため、家族や仲間同士でしっかり知識を持っておくことが大切です。

2. 発症時の応急処置の基本

アウトドアで低体温症(ハイポサーミア)が発症した場合、特に子どもや初心者でも実践できる応急処置の基本をしっかり覚えておくことが大切です。ここでは、現場で落ち着いて対応できるよう、体温維持と回復のためのポイントを分かりやすく紹介します。

まずは安全確保と状況判断

  • 風や雨を避けられる場所へ移動し、安全を確保しましょう。
  • 本人だけでなく同行者全員の体調も確認してください。

体温維持・回復の基本ステップ

ステップ 具体的な方法
濡れた衣服を脱がせる 乾いたタオルや服に着替えさせ、身体を冷やさないようにします。
温かい場所へ移動 テント内や車内など、風雨を防げる場所に避難します。
毛布や寝袋で包む 可能であれば毛布・寝袋・アルミシートで全身を包みます。
温かい飲み物を与える 無理なく飲める範囲で、甘いお茶やスポーツドリンクなどを少量ずつ飲ませます。(熱すぎるものはNG)

ポイント:頭部・首・脇・足元も保温!

頭部や首、脇の下、足元は特に熱が逃げやすいので、帽子やタオルでしっかりと覆いましょう。

注意点と受診の目安
  • 意識がもうろうとしている場合や手足が硬直している場合は、すぐに医療機関へ連絡しましょう。
  • 強く体をこすったり、無理に運動させたりしないよう注意してください。

これらの基本ポイントを知っておくことで、万一の際にも落ち着いて行動できます。家族や仲間と事前に確認しておきましょう。

適切な保温の方法

3. 適切な保温の方法

低体温症(ハイポサーミア)が疑われる場合、迅速かつ効果的な保温対策が必要です。特に日本のアウトドア環境では、気候や装備を考慮した適切な対応が大切です。

ブランケット・エマージェンシーシートの活用

まず最初に、患者さんを風や雨から守るために、防風・防水性のあるブランケットやエマージェンシーシートで全身をしっかり覆いましょう。アルミ製のエマージェンシーシートは軽量で携帯しやすく、日本の登山やキャンプでも必需品です。頭部も熱を逃しやすいので、帽子やタオルなどでカバーするとさらに効果的です。

衣類・装備の工夫

濡れた服は体温を奪う原因になるため、できるだけ早く乾いた服に着替えさせます。日本の山岳地帯では急な天候変化も多いので、ウールやフリース素材など、濡れても保温性が高い素材を選びましょう。また、防寒用インナーやレインウェアも有効です。

カイロ・湯たんぽの安全な使い方

使い捨てカイロや湯たんぽを利用する際は、直接肌に触れないようにタオルなどで包み、首元・脇の下・太ももの付け根など太い血管が通っている場所に当てると全身を効率よく温められます。ただし低温やけどには注意しましょう。冬場の日本では特にカイロが手に入りやすいため、常備しておくと安心です。

ポイント:無理な加熱は避ける

急激な加熱は危険なので、お風呂などに入れることは避けてください。ゆっくりと体を温めることが大切です。

家族でできる予防対策

アウトドア活動時は事前に天候を確認し、適切な装備(予備の服、ブランケット、カイロ等)を準備しましょう。子どもや高齢者は特に体温調整が苦手なので、小まめな休憩と声かけも忘れずに行いましょう。

4. 飲食による体温回復

低体温症(ハイポサーミア)を発症した場合、適切な飲食で体温を効率的に回復させることが大切です。しかし、誤った方法で与えてしまうと逆効果になることもあるため、注意が必要です。ここでは、アウトドア環境で実践できるおすすめの飲み物や食べ物、安全に与えるポイントをご紹介します。

おすすめの飲み物・食べ物

種類 具体例 ポイント
温かい飲み物 ホットスポーツドリンク、白湯、薄めた味噌汁 カフェインレスで塩分や糖分が含まれるものがおすすめ
消化しやすい食品 お粥、おじや、バナナ 胃腸に負担をかけずエネルギー補給できるもの
甘いもの チョコレート、キャンディー、ゼリー飲料 素早くエネルギー補給が可能

安全な与え方のコツ

  • 冷たいものやアルコール類は絶対に避けましょう。身体をさらに冷やしてしまう恐れがあります。
  • 一度に大量に摂取せず、少しずつゆっくりと飲食させましょう。
  • 意識がはっきりしない場合や嚥下が困難な場合は無理に飲食させないでください。誤嚥など危険があります。

家族や仲間への声かけ例

「温かいスープを少しずつ飲もうね」「飴玉なら舐められそうかな?」など、本人の様子をよく観察しながら優しく声をかけてあげましょう。

まとめ

低体温症の際は、身体を内側から温めるための飲食が非常に重要です。正しい知識と心配りで、大切な家族や仲間を守りましょう。

5. 医療機関への搬送の判断基準

どのような場合に救急要請するべきか?

低体温症(ハイポサーミア)は、適切な初期対応で回復する場合もありますが、重症化すると命に関わる危険性があります。以下のような症状が見られる場合は、ためらわずに救急要請(119番通報)を行いましょう。

救急要請が必要な主な症状

  • 意識がもうろうとしている、または反応が鈍い
  • 呼びかけや刺激に反応しない
  • 自力で歩くことができない、ふらつきが強い
  • 筋肉の硬直や震えが止まらない、または震えすらなくなった
  • 皮膚が冷たく蒼白、あるいは青紫色になっている
  • 呼吸や脈拍が不規則、または極端に遅い・弱い

迷った時の判断基準

「このまま様子を見ても大丈夫かな?」と悩む場合でも、屋外活動中は時間の経過とともに悪化するリスクがあります。特に小さなお子さまや高齢者の場合、体温調節機能が弱いため重症化しやすいです。不安を感じた場合は、安全を優先して早めに119番通報しましょう。

119番通報時のポイント

  • 「低体温症の疑い」と明確に伝える
  • 現在地(山中の場合は目印や登山道名なども)を落ち着いて説明する
  • 発症者の年齢・性別・症状(意識・呼吸・体温など)をできるだけ具体的に伝える
家族や仲間で協力を

アウトドアでは一人で対応せず、周囲と役割分担しながら冷静に行動しましょう。迅速な判断と連絡が、大切な命を守るカギになります。

6. アウトドアでの予防対策

家族みんなでできる低体温症予防のポイント

日本の四季折々の自然は魅力的ですが、気温や天候が変わりやすく、特に登山やキャンプなどアウトドアでは低体温症(ハイポサーミア)のリスクがあります。家族で安心して楽しい時間を過ごすためには、事前の備えと日頃からの対策が大切です。

適切な服装を選ぶ

アウトドアへ出かける際は、重ね着(レイヤリング)を意識しましょう。吸湿速乾性のある下着、中間層にはフリースやウール素材、外側には防風・防水性のあるジャケットを着用します。特に子どもは体温調節が苦手なので、こまめに衣服を調整してあげてください。

天気予報と現地情報のチェック

日本の山岳地帯や海辺は急な天候変化が多いため、出発前には必ず最新の天気予報を確認し、現地の気温や積雪情報などもチェックしましょう。雨具や予備の防寒具も忘れずに準備してください。

食事と水分補給で体力維持

エネルギー不足は低体温症につながります。おにぎりやパン、チョコレートなど手軽に食べられる高カロリーのおやつを用意し、こまめな水分補給も忘れないようにしましょう。保温ボトルに温かい飲み物を入れておくと安心です。

休憩時にも注意!

活動中だけでなく、休憩時も冷えに注意が必要です。湿った服は早めに着替え、風を避けて座る場所を選びましょう。敷物や簡易シートを使うと地面からの冷えも防げます。

日頃から防災グッズを準備

アウトドアだけでなく、日本では台風や地震など自然災害への備えも重要です。家族で使える非常用ブランケット、防寒シート、小型カイロなどを常備しておきましょう。また、緊急時の連絡方法や避難経路についても日頃から話し合っておくことが大切です。

まとめ:家族みんなで安全なアウトドア体験を

低体温症は正しい知識と準備で十分予防できます。日本ならではの自然環境を楽しみながら、大切な家族の健康と安全を守りましょう。「備えあれば憂いなし」、小さな工夫が安心につながります。