1. 氷点下キャンプにおける凍傷・しもやけの基礎知識
日本の冬キャンプでは、氷点下の環境下で長時間過ごすことが多く、特に注意したいのが「凍傷(とうしょう)」と「しもやけ」です。どちらも低温による皮膚や組織へのダメージですが、それぞれ発症メカニズムや症状が異なります。
凍傷としもやけの違い
凍傷は、主にマイナス4℃以下の厳しい寒さの中で皮膚やその下の組織が凍ってしまう状態を指します。特に手足の指先、耳たぶ、鼻先など体の末端部分に起こりやすく、進行すると感覚がなくなったり、重度の場合は壊死してしまうこともあります。一方、しもやけ(正式には「凍瘡(とうそう)」)は、気温がおおよそ5℃前後から0℃付近で発症しやすく、血行不良によって皮膚が赤く腫れたり、かゆみや痛みを伴います。
発症しやすい条件
氷点下キャンプでは、濡れた手袋や靴下を長時間着用したまま放置することや、防寒対策が不十分な場合にリスクが高まります。また、風が強い日や汗冷えした衣服を着ている場合も注意が必要です。
特に注意したい部位
最も凍傷・しもやけになりやすい部位は、手足の指先、つま先、耳たぶ、頬、鼻先です。これらは血流が少なく冷えやすいため、日本の冬キャンプでは特に重点的なケアと予防策が求められます。
2. 応急処置の基本ステップ
氷点下キャンプで凍傷やしもやけが発症した場合、迅速かつ正確な応急処置が重要です。ここでは、現場でできる応急対応の流れと注意すべきポイント、自分で避けるべき行為について解説します。
現場での応急処置ステップ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 安全な場所へ移動 | まずは風や寒さから身を守るため、テントやシェルター内など安全な場所に移動します。 |
| 2. 衣類・装備の確認 | 濡れた手袋や靴下、靴などはすぐに外して乾いたものに替えます。 |
| 3. 徐々に温める | 体温より少し高いぬるま湯(37~40℃)で患部を20〜30分ほど優しく温めます。直接ストーブや火で温めないよう注意しましょう。 |
| 4. 患部を保護 | 清潔なガーゼや布で覆い、摩擦や圧迫を避けて安静にします。 |
注意すべきポイント
- 患部をこすったり、強くマッサージしたりしないこと(組織損傷につながります)
- 急激に高温で温めないこと(やけどや悪化の原因になります)
- 水ぶくれは無理に潰さず、そのまま保護してください
自分でやってはいけないNG行為
- 直接火やストーブなどで温める
- 雪や氷でもんだりこする
- アルコール摂取による「温まる」効果を期待する(血管拡張による体温低下リスクあり)
医療機関受診の目安
色が戻らない、強い痛み・しびれが続く、水ぶくれが広範囲の場合は早めに医療機関を受診しましょう。適切な応急処置と早期対応が後遺症予防につながります。

3. キャンプで実践できる予防のコツ
冷え込む夜や早朝に備える日本流の工夫
日本のキャンプでは、特に冬季や標高の高い場所での氷点下キャンプが増えています。夜や早朝は急激に気温が下がるため、凍傷やしもやけを予防するための対策が重要です。ここでは、日本ならではの実用的なアイディアや持ち物、重ね着テクニックを紹介します。
1. 重ね着(レイヤリング)の基本
体温調整と保温性を高めるため、日本のアウトドア愛好者は「レイヤリング」を重視します。ベースレイヤーには吸湿速乾性のある化繊やウール素材、中間層にはフリースやダウンジャケット、アウターには防風・防水性のシェルを選ぶことで、効率よく冷えから身を守れます。
2. 防寒小物の活用
手袋・帽子・ネックウォーマー・厚手の靴下など、日本製の機能的な防寒小物も多く出回っています。これらをうまく使うことで、指先や耳、足先など末端部位もしっかり守ることができます。
3. カイロ&湯たんぽで局所保温
日本ならではの定番アイテムが「使い捨てカイロ」や「湯たんぽ」です。靴下用カイロや貼るタイプのカイロを上手に利用し、就寝時には寝袋内に湯たんぽを入れると効果的です。ただし低温やけどには注意しましょう。
4. 断熱マットとグランドシート
地面から伝わる冷気対策として、日本のキャンパーは断熱性能の高いマットやグランドシートを複数枚重ねて使用することがあります。これにより、底冷えを大きく軽減できます。
ワンポイント:温かい飲み物と食事で内側から温める
日本独自のおでんや鍋料理、ホットドリンクなど、身体を内側から温める食文化も上手に取り入れましょう。体温維持に役立つだけでなく、楽しいキャンプ体験にもつながります。
4. 湿気・汗との付き合い方
氷点下キャンプでは、しもやけや凍傷の大きな原因となる「湿気」や「汗」の管理が非常に重要です。特に日本の冬は湿度が比較的高く、日中と夜間の気温差も大きいため、衣類の選び方や着替えのタイミングがしもやけ予防につながります。
湿気・汗によるリスクを知る
体温を保つために重ね着することが多いですが、運動や作業で汗をかくと、そのまま湿った状態になりやすくなります。湿った衣服は体温を奪い、皮膚表面の血流低下を引き起こし、しもやけや凍傷リスクが高まります。
日本特有の気候を考慮した衣類管理法
| ポイント | 具体的対策 |
|---|---|
| インナー選び | 吸湿速乾性素材(例:化繊やウール)を選び、綿素材は避ける |
| レイヤリング | 重ね着で調整できるようにする。外気温・活動量に応じて脱ぎ着しやすい構成にする |
| こまめな着替え | 汗をかいたら早めにインナーだけでも着替える。特に靴下・手袋は必ず予備を用意 |
| 通気性の確保 | テント内換気やウェアのファスナー開閉で湿気を逃がす工夫をする |
| 就寝時の注意 | 寝袋に入る前には必ず乾いた衣服へ着替える。汗冷え防止にフリース等で保温性アップ |
現場で実践した工夫例
私自身、氷点下キャンプ中に焚き火作業で思った以上に汗ばんだ経験があります。その際、すぐにインナーを着替え、濡れた靴下は新聞紙に包んで水分吸収させながら乾燥させました。これだけでも朝方の足先の冷え方がかなり違いました。
しもやけ・凍傷予防には、「濡れたまま放置しない」「日常よりこまめな着替え」を徹底しましょう。また、日本の冬特有の湿度変化にも敏感になり、その場その場で柔軟に対応することが大切です。
5. 症状がひどい時の受診目安
医療機関を受診すべきケース
氷点下キャンプ中に凍傷やしもやけが疑われる場合、以下のような症状が見られた際は、自己判断せず早めに医療機関を受診することが重要です。
- 患部の皮膚が白っぽくなり、感覚がなくなる
- 水ぶくれや黒ずみなど明らかな異常が現れる
- 強い痛みや腫れが続く
- 全身の寒気・震え、意識がもうろうとする
- 応急処置後も症状が改善しない、または悪化する
現地での判断基準
日本の山岳地帯やキャンプ場では、天候やアクセスの制限から迅速な対応が求められます。次のポイントを参考にしてください。
- 患部の皮膚色:赤み→白色→青黒色へと変化する場合は重症度が高い
- 痛みやしびれ:時間経過とともに増す場合は危険信号
- 自力で温めても回復しない場合
上記に該当したら、すぐ下山や救助要請を検討しましょう。
日本の応急連絡先情報
万一の場合、日本国内で利用できる主な緊急連絡先は以下の通りです。
- 119番:消防・救急要請(全国共通)
- #7119:救急相談センター(地域によって異なる)
- 山岳地帯では、登山届提出時の管轄警察署への連絡も有効です。
安全第一で無理をしない判断を
氷点下キャンプでは、「大丈夫だろう」と思わず、少しでも異常を感じたら早めに助けを呼ぶ勇気が大切です。自分や仲間の命を守るためにも、日頃から応急処置法だけでなく受診目安も把握しておきましょう。
6. 体験談・フィールドからの学び
北海道・道東キャンプ場での体験談
「初めて氷点下10度を下回る中、友人とキャンプをしました。夜間、指先の感覚がなくなり、しもやけになってしまいました。特に濡れた手袋で長時間作業したことが原因だと思います。応急処置としてぬるま湯で温め、すぐに乾いた手袋に交換しました。それ以降はこまめに手袋を替えたり、防寒インナーを重ねるようにしています。」
長野・冬山登山で学んだこと
「標高2,000m以上の山小屋泊登山で、足先が凍傷寸前まで冷えた経験があります。靴下が汗で湿ったままだったことが大きな失敗でした。以後、休憩ごとに靴下を履き替えることや、インソールを工夫することで予防できています。また、同じ行動をしていても個人差が大きいので、一緒に行動する仲間とお互いの状態を頻繁に確認し合うようになりました。」
関西・家族キャンプからの注意点
「子どもと一緒の冬キャンプでは、大人よりも子どもの方が体温低下が早いです。寝袋の中でも油断せず、カイロや湯たんぽを活用しつつ、寝る前に軽く運動させて身体を温めてから就寝させるよう心がけています。また、耳や頬など露出部分もしもやけになりやすいので、ネックウォーマーや帽子でしっかりガードしています。」
現場から得られたリアルな教訓
- 濡れた衣類は即座に交換する習慣を持つこと
- 防寒アイテムは「重ね着」と「空気層」を意識する
- 仲間同士でお互いの様子を頻繁にチェックする
- 無理せず異変を感じた時点ですぐ対策・撤退判断をする勇気が重要
まとめ:安全な冬キャンプ・登山のために
実際の現場では予想外のトラブルや体調変化が起こります。事前準備と現場での柔軟な対応力、それぞれの経験者から得た知恵を活かして、安全で楽しい氷点下アウトドアライフを送りましょう。
